香道とは飛鳥時代よりの伝統を持つ唯一の香りの芸術であります。平安貴族に依って香道の古典教養が培われ、鎌倉時代を経て、手前作法の基礎が定められ、江戸期には最盛期を迎えました。この頃は、上は天皇様から、下は町人に至るまで、香道を嗜んだと伝えられております。明治以降は衰退の一途をたどりましたが、近年復興の兆しが見られます。香道を修練すれば、手前作法を通じて、日本古来の礼儀作法が身につき、多くの組香を学ぶにつれて、古今集、源氏物語などの古典が自然と覚えられます。また香木は現在も漢方薬に使われ、薬学的な成分が含まれ、医学的にも秀れた効果があると言われております。多くの芸術、芸道の中で、香りを中心とする独特な香道は、この複雑な現代社会の私達にとって、新たな心の拠所となるでありましょう。
香道 泉山御流 宗家 西際 好譽
泉涌寺と泉山御流
泉涌寺は京都東山南峰泉山に位置する真言宗泉涌寺派総本山であり、一般の寺院とは異なり、寺域内に、歴代の天皇様を始め、多くの皇族方の御陵を擁する特異な寺院であります。このため皇室の香華院とされ、「御寺(みてら)」と呼ばれております。泉涌寺には、天下第一の銘香蘭奢待を始め、天皇様のお使いになられた香道具などが大切に蔵され、香道の伝統を今に伝えております。泉山御流は、この泉涌寺長老を御家元と仰ぐ香道の流派でございます。